2002/6/30(日)から7/6(土)までの日記


このページは今回の作品「ベリースタートっ!」にてスタッフとして頑張って頂いた
蒲生さん、北原さんの視点から見たメイキング日記をお贈りいたします。
北原さんの「モザイク日記」。
蒲生さんの「撮影日記」(蒲生氏メルマガより転載。)

「撮影日記 一」

2002年6/30(日)

明日から始まる二週間の沼津ロケのため、本日は移動日。
午後三時三〇分、メインキャストの阿部英貴さんと久保田悟さん二人と新宿スバルビル前待ち合わせ。
私は車で迎えに行く。しかし交通事情を読み誤り遅刻。初っぱなから全く情けない限り。
携帯電話で遅刻する旨伝え、待ち合わせの一〇分後にスバルビルの前に到着。
二人は結構大きな荷物を持って待っている。
車のトランクは撮影機材、照明機材などで相当埋まっていて、すべての荷物を詰めるのに、少々苦労する。
ともかくも二人のその荷物を乗せ、一路沼津へ。
用賀より東名高速に入る。道は比較的すいている。
東名高速といえば、何年か前御殿場で豪雨に遇ったことを思い出す。
あのときは前を走る車さえ見えない状態で、水たまりに足をすくわれるし、
衝突事故を起こさないかとびくびくしていたものだ。
今回も、出発時に晴れてはいても、梅雨の時期、変わりやすい天気を見越し
てワイパーを新品に取り替えてきた。
もっとも、前回ワイパーを取り替えたのがいつだったか覚えていないくらいだから、
御殿場を走る予定がなくても替えるべきではあったろう。
足柄パーキングエリアを越えたあたりから、天気は悪くなったものの、小雨程度で御殿場を通過。
ひとまず胸をなで下ろす。駒門パーキングエリアで短い休憩を取った後、再び出発。沼津インターを下りる。
監督の奥田徹さんの実家の最寄り駅は東海道本線の沼津の次、片浜なので、沼津
駅付近で後ろ座席の阿部さんが携帯で電話をかける。午後六時頃、片浜駅に着く。
ほどなく監督登場。監督を車に乗せ、これから二週間の間合宿所となるウィークリーアパートへ。
週貸しのアパートというもの、何年か前の借地借家法改正でできることとなったのだが、
私を含め全員、住むのは初めて。監督ももちろん、借りるのは初めて。
風呂、手洗い、台所の他、三畳ほどのロフトが付いているので、
広々とはいかないものの、まあ不自由するということもないほどの広さだ。
さすがに新しく、結構きれいなところで、保証金などを含めると家賃も結構いってしまうとは監督の弁。
コマーシャルでは安そうに言っていても、実際にはその他になんだかんだと取られて
しまう、こんなことが続くと、商人に対し疑心暗鬼になってしまう経験ですね。
このアパート代は彼が夜間のコンビニのアルバイトで貯めた、なけなしの銭から出ているわけで、
愚痴のひとつも言いたくなるというものでしょう。
だいたい映画製作というものはお金がかかる。自主製作だからとスタッフ、キャストにギャラは
払わなくても、機材費、移動のための交通費だけでも、結構な額になってしまう。
これを時給何百円のアルバイトで貯めるのだから、自主製作の監督は大変なのだ。
もちろん製作をしている間はアルバイトはできないので、収入はまるでない。予算計画
がちょっと甘いと、資金が尽きて映画が完成しないことも数多くあるのだ。
さて、アパートで少し落ち着いた後、四人でファミレスに出かけ夕食。
一旦アパートへ戻って役者の二人を下ろし、私と監督は明日から始まるロケ地の下見に出かけた。
夜も大分ふけて、暗くて見にくかったが、それでもある程度はどんなところか分かる。
沼津というところは、山が海に迫っているため、両方のロケーションが使える。
その他漁港があり、そこそこの大きさの街があり、工場があり、贅沢を言わなければ
結構いいロケ地がそこここにあると言える。
それでも監督は「沼津はいろんなものがあるけど、中途半端で…」と言うのだが。カーラジオをつけたら、
ワールドカップの決勝戦がやっていた。ドイツがブラジルに負けそうだとか言っていた。
二週間前にも書いたように、ワールドカップには反対だったのだけれど、
どちらが優勝するのか、さすがに少々気にはなっていた。
あちこち回ってから監督を家に送り、アパートに戻ったときには、十二時を回っ
ていた。電気をつけて、すでに布団に入っていた役者二人を、起こしてしまったよ
うだ。明日、クランクインの朝も早いのに、と少々悪い気持ちになりながら、慣れ
ない枕を頭に、就寝したのだった。


(奥田コメント。)
そうそう、この日の事はうちのエッセィでも書いてたねー。
撮影場所下見に行って前の車が脱輪してた奴だね。しかしまぁーなんだねー、
「監督」とか書かれると他人事のように感じてしまうねー。(自覚なし・・・。)
バイトの苦労とか書かれてるし・・。もっと頑張らなきゃねー。うむ。


合宿部屋にて、ロフトからの写真。(6/30)
赤いのが阿部さん。白いの久保田君。手前が蒲生さん。
一度も使われる事がなかったカチンコが見えますねー。

「撮影日記 二」

2002年7/1(月)

撮影初日。前日、監督は雨が降らなければ朝六時に撮影を開始すると言っていたものの、外は雨。
五時半頃に監督から電話があり、とりあえずアパートで待機せよとの連絡。
前日、移動日の夜も遅かったこともあり、私とメインキャストの二人、電話を切った後また布団に入る。
眠っていると、八時頃、再び電話あり。
雨も上がったので撮影する、監督の家の前に集合されたし、と言われる。
とりあえず身支度を整え、私と二人の役者、車で出発、途中コンビニエンスストアで朝食を買い、
車中食、監督の家に向かう。監督の家はアパートから一駅向こうで、
道もかなり込んでいたため二十分ほどかかる。ひとつ曲り角を見落とし、引き返す。
言い訳をするわけではないが、非常に分かりにくい交差点である。
監督、そしてさらに今日のもう一人の出演者である監督の友人と合流し、
オープニングシーンのロケ現場へ向かう。
オープニングシーン、海岸近くの工場裏。登場人物・主人公の佑樹、及び同僚。
必要なカット・引き絵で工場を背景に二人の登場人物、佑樹一人のフルショット、
抜きでバストショットなど。天気を気にしながら撮っていると、雨が振り出し一時
中断。小降りになってまた再開。どうにか撮り終える。
ごく大雑把に言って、一分間のシーンを撮影するには一時間ほどかかる。カメラ
や照明のセッティング、打ち合わせ、リハーサル、本番。
本番が気に入らなければ撮り直し。構図にしろ、背景にしろ、役者の細かい動きにしろ、
それぞれにこだわらなければいいシーンは絶対撮れない。
もちろんこの一時間で一分という数字は監督によって大きく違う。
すぐにOKを出す監督もいれば、粘る監督もいる。
粘るべきかすぐにOKにすべきかは作品の性質にもよるし、一概にはどちらがいいとは言えない。
ちなみに私は粘らない方である。
奥田監督はと言うと、今回はとにかくじっくり撮る、納得していないのに慌ててOKを出すようなことはしない、
とはじめから言っていた。確かにこのオープニングシーン、かなりゆったりペースである。
オープニングシーンを撮り終えると、雨で撮影ができないので、
明日よりの撮影場所をキャストと一緒に下見に向かう。
海だの山だの見に行った後、沼津港で食事。その後、雨も上がっているのでさらにワンシーンを撮影。
場所は堤防の脇。出演者は主役の阿部さん一人で、それほど長いシーンでもなく、
さらに台詞もないのだが、小さな表情などにこだわり、監督なかなかOKを出さない。
こんなシーンでここまで粘るのなら、他のところではどうなるのだろうと少々不安に思いながらも、
何度かの取り直しの後、監督ようやくOKを出す。
特に最後の阿部さんが走っていく後ろ姿のカット、気に入った様子。わずか二シーンで本日の撮影終了。
喫茶店で休んでいると、今日から合流するスタッフの北原登志喜さんから沼津駅に着いたと電話連絡。
彼が増えるだけでも随分撮影がはかどるかとも思いつつも、この梅雨の時期、
これからずっと雨だったらと少々不安もある。沼津駅へ迎えに行きながら、
先のことを一々心配しても仕方がないかと思う。
こんなわけで、今回はゆっくりじっくり撮っていくと言う、監督の言葉の通り、
かなり遅めの立ち上がりのクランクイン当日の撮影は終わったのであった。


(奥田コメント)
こらこら、この日は北原さん来た後、もうワンシーン撮ったじゃーん。
ボールポンポン蹴って歩いていく奴。んで、カップラーメン夜食べる奴は後日に
回したんだよねー。あの曰く付きのカップラーメンシーンね。堤防での演出は
「阿部さん好きな人いる?」「はい」「じゃ、大嫌いな人はいます?」「はい、います。」
「いいんすか!沼津なんかにいて!その大嫌いな男が大好きな人を狙ってるって噂ですぜ!」
と、とんでもない演出をしていた記憶が・・・。


「モザイク日記・その0・長いイントロ」

7月1日。品川駅。
11時40分発の東海道本線普通列車に飛び乗る。目的地は、沼津。
そう。いよいよ今日、奥田監督作品『ベリースタートっ!』がクランクインするのだ。
しょっぱなから約2週間の沼津<合宿>ロケ。かなり無茶なやりくちだ。無茶だが、胸が高鳴る。
仕事の都合でファーストシーンの撮影には立ち会えないが、お手伝いすると決めた以上、
記念すべき初日の撮影、せめてワンカットなりと関わっておきたい。
「もっと速く走れ、クソ電車!」
夜勤明けの眠たさもなんのその、心はハヤるばかりだった(やや誇張あり)。
・・・ボクの前の座席に座って『ちょびっツ』第2巻をいとおしむように繰り返し読んでいる青年。
その青年の少し曲がった顔を眺める事2時間余りで、列車はようやく沼津駅に到着した。
(海が見える側に座ればよかった・・・)
苦い想いを、沼津の、微かに潮の香を帯びた大気と共に飲み下し、ホームに降り立つ。
早速、奥田監督に電話だ。みんな待ってんだろうな・・・
「もしもし、今着いたよ」
「あ、ごめ〜ん。今ちょっと撮影してるから、またかけなおす〜」
「どのくらいかかる?」
「ブチッ! ツー、ツー、ツー・・・」
・・・駅前のビル群に注ぐ強い日差しに眼を細めながら、ここまで来た事を少しだけ後悔した。

3時を少しまわった頃、無事撮影隊に合流。「撮影隊」と言っても、そこはそれ、自主映画である。
奥田監督、主演男優の阿部さん、久保田さん、総助監督の蒲生さん、そしてボクを加えた総勢5名。
所帯は小さい。っていうか、移動の事を考えると蒲生さんのセダン1台じゃ、この人数で一杯一杯だ。
再会の挨拶もそこそこに、奥田監督が
「じゃ、行くよ〜」
どうやら、また撮影が始まるらしい。よかった、間に合って・・・
次ぎのロケ場所に行く途中の車内で、この日の撮影について説明をうけた。
それによると、今日は長い雨待ちを経ての撮影だったらしい。
それでも予定通りのファーストシーンと、+1シーンを取り終えたという。
「いいよぉ〜。ステキだぜぇ〜」
監督が嬉しそうに何度もそう言った。そうか、ステキなのか・・・。それはそれとして、
今日はみんな、たくさん汗をかいたんだなぁ。蒲生さん、当分とれませんよ。
この、車内に充満した「剣道の防具」の臭い・・・・・

15分後、とある畑の傍らに車は到着。
その畑にそって伸びる一本道が、今日の最終シーンの芝居場だった。
「真横から、引きでねぇ」
言い置いて、監督は早速15メートル向うの芝居場で、役者さん達に演出をつけ始めた。
その間、ボクと蒲生さんが監督の希望通りにカメラをセットする。
ふむ、どうやら少し畑の中に入ったほうが画がカッチリ決まるようだ。ちょっとだけ周囲をうかがう。
ま、この時間だ。畑仕事もあるまい。いさぎよく畑に踏み込む(非道)。
いやいや、実際はちょっと畦に三脚を立てた、という程度。モチロン農作物は踏んでません。
立てた三脚にカメラを乗せて覗いてみる。うん。なかなかいいぞ。
と、ふいに背後から声をかけられた。振り返ると、腰の曲がった婆さんが立っている。
(やべぇ、畑の持ち主が文句でも言いに来たか!?)
ところが、である。確かにその婆さん、畑の持ち主だったのだが、文句を言うどころか、
「ごめんねぇ、畑入ってもいいかねぇ?」
逆に恐縮している様子。
「モチロンです! こちらこそ済みません! 勝手にこんな・・・」
慌ててお詫びするボクと蒲生さんの横を、曲がった背を更に曲げて、申し訳なさそうに通っていく婆さん。
・・・婆さん、その腰の低さ、アンタきっと出世するぞっ!!
沼津の人の純朴な心根に触れ、不覚にも熱くなる目頭。
そんな気恥ずかしさを誤魔化す様に15メートル向うにいる監督達に眼をやると、
監督はまだ役者さん2人に演技をつけていた。
時にアクションを交えて何事かを伝えようとしている奥田監督。
そのひょろっとした身体の動作を見ているうちに、監督が何を言っているのか聞きたくなった。
カメラにガンマイクを差しこみ、監督の口元に向けてみる。
途切れがちではあるけれど、監督の声がヘッドホンを通して聞こえてきた。
「・・久保田君さぁ、もっと嬉しそうに・・・ここで何歩か前に出て・・でしょ?」
「阿部さん、・・まだここではホラ、祐樹は・・・気持ちが・・宏也に対しても・・で、・・・」
切れ切れに伝わる言葉を総合すると、いま監督がひっかかっているのは両男優の感情の
流れのようだ。ここで面白い事に気付く。
明らかに監督は阿部さんと久保田さんに対する演出のつけ方を分けているようなのだった。
演技経験のない久保田さんには感情の表し方(見せ方)についてのアドバイスがほとんどで、
一方、舞台での演技経験豊富な阿部さんに対しては役の内面に関する言及がかなりを占める、
という具合。ま、監督にすれば
「そんなの当たり前じゃん」
の一言で済まされる事なのだろうが、演出経験の少ないボクにはこういう事がいちいち勉強になる。
5分後、やっと監督がボクらの待つカメラの所に来て、ファインダーを覗いた。
ちなみに、今回の撮影では、監督が自分でカメラをまわす事になっている。
よって、ボクらスタッフは大体のカメラ位置を聞いてセットし、監督のチェックを待つ、という次第。
構図に若干の修正を施した後、リハーサルを1回はさんで、
「じゃ、まわしてくよ〜。よーい、スタート!」
ようやく本番が始まった。ボクにとってはこの映画、初めての本番。
久しぶりに味わう独特の緊張感の中で、(あぁ、映画とってるんだなぁ)という感慨が身体中に染み渡る。
・・・・・・・「カット!」 長い、緊張の2分が終った。
監督の顔をうかがうと、その表情が曇っている。納得がいかなかったらしい。
「あれぇ? どしたぁ? リハーサルでは出来てたのに・・・」
首を傾げながら、役者達の元へと駆けて行く監督。ふと、撮影前に監督のもらした言葉が頭をよぎった。
「今回は粘るよ〜」その宣言通り、再度長い演出タイムに突入。
テストを経て、リテイク。更にもう1回。贅沢に時間を使っての撮影となった。
その後、寄りのカットを幾つか撮ったり、声だけの<オンリー>を押さえたり、
勝手にフレームを動かしたボクが監督に激怒されたりしながら、
日もだいぶ翳った午後6時、本日の撮影が終了した。

・・・だいぶ長くなってしまったので、この後の事はかいつまんで。
みんなで100円ショップやスーパーに行き、生活用品の買出し。
アパートに帰ってからは、<デキる男>こと蒲生さんが晩飯を作ってくれている間、
役者さんも交え、ビデオで今日撮った映像をチェック。
あーだ、こーだと言いながら食事して(めちゃウマかったっす)、酒飲んで、探り合いの様な会話をして、
また酒飲んで、気付けば午前に突入する寸前で、奥田監督は実家に帰り、
明日も早いからそろそろ寝ようか、って、ちょっと待って!オレの布団無いじゃんっ!!
ってな事が発覚して少し悲しくなったりして、ようやくこのハードな1日が終ったのでした。
は〜〜〜、長い1日だった。
・・・・・・・・・・・・・・・で、オレは今夜、床で寝るの? 


(奥田コメント)
この日は鮭のムニエルでしたねー。キッチンに文句を言っていた蒲生さんが
忘れられません。


 
オープニング撮影風景。            撮影場所チェック。

 
堤防のシーン。                この日の最終ロケ場所。

「モザイク日記・その1」
〜現れたアドリブ王、そして香貫山〜

7/2(火)
2日は7時起床。8時の出発に合わせ、メシ、風呂、衣装の確認など、慌ただしく準備する。
その間、阿部さんがしきりに鼻の頭を気にしている様子。
「どうしたの?」見れば、前日の強い日差しがタタり、皮が少し剥けていた。
「コレ、やばいっスよねぇ?」心配顔の阿部さんに、
「いや、もう、全然大丈夫ですよ! 気にする事ないっス!」
無責任に即答で返す。役者さんの不安を取り除いてあげるのもスタッフの仕事だ。
悩むのは監督1人でいい。・・・とにかく出発だ。蒲生号のエンジンも温まっている。
さあ、長い1日が始まるぞ。
奥田監督と落ち合い、今日のゲスト出演者、坂部さんとの待ち合わせ場所に向かう。
ちなみにこの坂部さんは奥田君の同級生。昨日のファーストシーンの<同僚>役といい、
今回の撮影では、奥田君は地元の人脈をフル活用する気らしい。
ややあって現れた坂部さんは、スラっとした2枚目で、とにかくシャベリが面白かった。
そんな彼の人となりを熟知している奥田君が坂部さんに対して出した指示は、
「好きにやっていいから。いつもの坂部でね」
という、非常にシンプルなものだった。さすがに戸惑う坂部さん。
「え? アドリブいいの?」「全然いいよ」「マジかよ〜」
最初は困った様子の坂部さん。けれど次第に乗り気になっていく。
結局わずかな打ち合わせだけで、本番に突入する事となった。
坂部さんが演じるのは<彰雄>。主人公である<佑樹>の、気の置けない友人である。
その<彰雄>と<佑樹>が走行中の車内で会話を交わす、というのが今日の最初のシーン。
早速、坂部さんの車の前部シートに本人と阿部さんが乗り込み、後部シートにはカメラをまわす奥田君、
そしてマイク持ちのボクがもぐりこんだ。
「じゃ、適当にこの辺ぐるぐる走らせて」「おう」
待機の蒲生さんと久保田さんをその場に残し、車は走り出した。
「じゃ、なんか2人で適当に喋ってて。で、いいところでセリフちょうだい。カメラまわしっぱなしでいくから」
すっかり坂部さんのアドリブに期待している奥田君。そして、その期待は裏切られなかった・・・
前髪をかき上げるようなさりげなさで、いきなり坂部さんの「無駄話」が炸裂。
そんなアドリブに<佑樹>として応えなければならない阿部さんがやや押され気味なくらい。
時折マイクを通して、奥田君が「クスッ」と吹き出す声が伝わってくる。ボクも時々笑いそう
になるが、そこはマイクを持っているのでガマン、ガマン。
でも、監督。一つ聞きたいんだけど。なんか映画のテイスト、変わってないか?

結局10分程もカメラをまわして、このシーン終了。
蒲生さんに連絡し、このまま次ぎのロケ場所に向かうので、そちらに直行してくれるよう頼む。
向かう先は香貫山。沼津市街の南東に位置する小高い山である。
「せっかくだから、2人の掛け合い、もっと撮っとこうぜぇ〜」
奥田君の発案で、山に向かう道中もカメラをまわす事に。ここでもアドリブで笑わせてくれる坂部さん。
いいキャラだなぁ〜。でも、最初は押され気味だった阿部さんも今ではすっかりタメはってるぞ。
20分後、山の中腹にある車止めの鉄柵。その前の、見晴らしの良い駐車場(広場?)に車を停めて、
次ぎのシーンの撮影準備に入る。
ここではまず<佑樹>と<宏也>のファーストコンタクトのシーンをチョロっと撮って、
その後、<彰雄>の車を降りる<佑樹>、というシーンを撮る。
一つめのシーンはただ車ですれ違うだけなのですぐに終り。で、二つめのシーン。
奥田君が役者さんに段取りを着けている間に、例によってカメラのセッティングをする蒲生さんとボク。
カメラ位置の都合でマイクに竿が必要だ。早速「竿用に」と奥田君に渡されていた棒を車から持ってくる。
その六角形の木の棒、いや、杖、にガムテープでマイクを止めて準備完了。
・・・・・ねぇ、この杖、「富士登山」って印が押してあるんだけど。
何かを冒涜している様な気がして、ちょっと後味悪いよ・・・

引きと、それぞれの寄りを1本ずつ押さえ、このシーン終了。アッという間だった。
ふと阿部さんの顔に眼をやると、力の抜けた、いい顔になっている。坂部さんにほぐされたみたいだ。
昨日最後に撮ったシーンでは当初、阿部さんの顔に若干の強(コワ)さがあった。
と言っても別に緊張で顔がこわばってた、とかいう訳じゃなく、
阿部さんなりに役の内面を考えての事だったのだが、
私見で「もう少しニュートラルな感じになればなぁ」などと勝手に思っていた
(モチロンOKカットでは良い感じになっていたが)。で、今のこの雰囲気だけど、これ、ちょっといいんじゃない?
監督、さっきのアドリブ合戦、ひょっとしてこれを計算してた?

この日の出番が全て終了した坂部さんはこれでお帰り。の予定だったが、
予想外にテンポよく撮影が進んだため、まだケツまで余裕のある坂部さんにもう少し付き合ってもらって、
来週撮る予定だった海のシーンの幾つかをあげてしまおう、という次第に。早速、移動。
が、ここでトラブル発生! なんと蒲生さんの車がパンクしたという。
え〜っ!? ひょっとしてボクら、羽をもがれた小鳥!?
「いや、取り敢えずスペアタイヤあるから・・・」ほっ。しかし、奥田君はまだ心配顔。理由は、これ。
「直すの、いくらかかります?」
この映画に有り金はたいている奥田君。ここでの予想外の出費はかなり痛いんだろうな。
「う〜ん・・・お店に行ってみないと」という蒲生さんの応えに、
「自転車だってパンク直すのヘタすりゃ2,000円いきますよねぇ」
と、実に悲しそうな顔をする。・・・奥田君。他に言う事もないので取り敢えず言っとく。頑張れ。
ま、とにかく海だ。スペアタイヤな蒲生号で出発する。
・・・それにしても、沼津はいいねぇ。海と山、絶好のロケーションがこんなに近くに揃ってんだもの。
で、30分後には海岸でカメラのセッティングをしている蒲生さんとボク。最初はドーンと引いていこう! 
というのが奥田君の要求。海を背にして堤防をのぞむ、思いっきり抜けのいい画。音はナシ。
次いで、寄って2ショット。うわっ、セリフがめちゃ増えてる。ここもアドリブOK。でも、イイ感じ。
撮影はサクサク進む。結局、<ぺコ>役の天城さん抜きで撮れる<彰雄>の海のシーンは、
全部撮ってしまった。「お疲れ様でした〜」坂部さんが帰り、時計を見ればもうお昼。
<佑樹>1人の海のシーンを撮り終えたら昼飯にしよう、となる。さて、このシーン。
<佑樹>が、防波堤の上で海を眺めながら、言葉にならない思いを背中で語る、
という、まことに趣き深い場面なのだが、ここで奥田君の演出がいきなり暴走。
「阿部さん! 海に向かって叫んでください!」・・・・・なんですと? 
戸惑う阿部さんに、「例えばこんな風にっ!!」と、監督みずから、海にむかって吼えて見せる。
「うおああああああぁっっっ!!」・・・って、アンタはゴールを決めた直後のバティストゥータかっ! 
が、叫んだことで返って冷静になったのか、
「いや、ちょっと待って下さい! 何を言ってるんだ、俺は?・・・ごめんなさい! 今のナシですっ」
見失ってた自分を取り戻す奥田君。・・・・奥田君。ずいぶん早く来たな、オーバーヒート。
それと、関係ないけど久保田さん。
その、右手に持ってる白木の位牌はナニ? えっ? 波打ち際に落ちてたの?
でも、あんまりそういうモノは拾ってこない方が・・・・・

結局このシーン、監督がはっちゃけた分、上げるのに結構時間がかかった。
おかげで随分と遅くなったけど、さあ、昼メシだ。
奥田君オススメの弁当屋に行って、「カロリー大好きっ!」ってな感じの弁当を各自購入。
海に戻って各人バラバラに腰掛け、かっ込む。いやあ、海風を全身に受けながら食うメシはウマ・・・あっ!
芝漬けが飛ばされたっ!・・・風、強過ぎだよ・・・
食後、市街へ。とにかく蒲生号のタイヤを直さなくてはならない。
この車はボクらの命綱のようなものだから・・・。カーショップを探してグルグル、グルグル。
30分も走ったろうか。ようやく一軒の修理屋を見つけ、早速見てもらう。
「自転車だって2,000円だろ〜?」奥田君、まだ言ってる。まあ、心配は解らないでもない。
だってここの店員、モロに「人の足元見て新品売りつけそうな顔」してんだもん。
が、あっけなく修理は終り、今度はその店員が「ふっかける男の顔」になって蒲生さんに何か言っている。
しばらくしてボクらのもとに来る蒲生さん。「いくらだって?」真っ先に奥田君が聞く。と、その応えは
「1,500円だって」・・・・・スマン、店員の兄ちゃん。アンタの顔のこと、めちゃくちゃに言って。

さて、心配事も吹き飛んで、再び香貫山へ。
お待たせしました、久保田さん。いよいよ出番です。もう、退屈にまかせて位牌いじくってる暇はないですよ。
と言っても、山の日は落ちるのが早い。今日はあと1〜2シーンで終わりかな? 
まずは<佑樹>が長い山道を<宏也>めがけて走って登って来るシーン。
阿部さんのたっての希望もあって、実際にかなり下の方から走って来てもらう事に。
携帯でキュー出しして、「よ〜い、スタート!」
(・・・・・どこまで行ったんだ? 阿部さん・・・あ、来た! 足がもつれてる・・・) 
えらい長い事かかって、ようやく「カット!」、テイク1が終る。で、監督の評価は・・・NG。
「もう1回、ごめんなさいねぇ〜、阿部さ〜ん」さすがに恐縮する奥田君に、
「いや、全然大丈夫っすから!」快活に応える阿部さん。
・・・・・でも阿部さん。チアノーゼ出てますよ?
それと、今更ですけど、やっぱりその「剥けちゃった鼻」、微妙っス!
結局次ぎのテイクでOKが出て、一同「ほっ」。
今度はその<佑樹>に対する<宏也>のリアクション、及び、
とぼとぼと山を降りてくる<宏也>のカットをいくつか撮る。その撮影の最中、一つの課題を発見。
「<宏也>を勢い余って放送禁止キャラにしないように!」って、これは監督が考えればいい事だな。
この後、実景をいくつか撮って、この日の山での撮影が終了した。
あとは、帰る道すがらコンビニ前でちょろっと1シーン撮れば今日の撮影予定コンプリート!
だったんだけど、車内で奥田君が一言、「コンビニは明日でいいかぁ〜」
ま、今日は明日と来週の分も少し撮っちゃったからね。余裕はあるし。
はい、お疲れ様でした〜! まだ2日目だけど、うん、良いペースだ。 
 
この後は晩飯のおかずを買出しに。
朝からの緊張が解けて食い物のことだけ考えるこの時間が、モルヒネのように心地良い。
今晩の献立はカレーだ。理由は「何日も食えるから」。奥田君の実家に寄って、大きめの鍋と、
買い忘れた食材もゲットする。部屋に帰ると、今日も蒲生さんが料理を開始。スミマセン。
今日は車の運転が続いて、誰よりも疲れているのに・・・
待つ事、1時間。鍋二つ分のカレーが登場。すげぇよ、蒲生さん! よ〜し、食うぞ!!
・・・1時間後、部屋に響く久保田さんの満足げな声。
「カレー、コンプリートしましたっ!」
少なくとも2日間は食べるつもりだったソレを、いきなり食い切ってるオレら。
・・・・・・・・ダメじゃん。


(奥田コメント)
この日はみんな朝から二日酔いの顔してたよね。二日目からこれかよーって内心思ってた。
坂部のアドリブ九割はカットです。


7/2始まる前に段取り説明の図。

「モザイク日記・その2」
〜阿部<佑樹>誕生! 演出補助は帰ります〜

翌日は5時起床。のはずだったが、昨夜、何の気なしに機材チェックした折、
マイクのプラグがいかれているのが判明。
新品のプラグを買う必要が出た為、7時半起床に変更。
昨夜のその報せを聞いた瞬間、布団に入っていた皆がバネ仕掛けのように跳ね起き、
酒盛りが始まったのは言うまでも無い。
ちなみに何故そんなに早く起きる予定だったかというと、
奥田君の母校(小学校)の校庭でちょこっと撮影したかったから。
「そんな時間なら誰もいないだろう」と見当をつけてのことだった。
が、音が録れなければどうしようもない・・・。

明けて、3日。阿部さんの二の舞は御免と、
皆が日焼け止めクリームを塗り終わるのを待って、8時15分、アパートを出発。
今日も狂ったように暑くなりそうだ。
8時半、奥田家前に到着。「おはよう」を言うや否や、直ぐに裏手の畑に移動。
モーニングコーヒー代わりの1シーンを撮影する。ここは音は必要無い。
その後、ぼんやり時間をつぶしながら、電器屋が開店する10時を待つ。
その間、奥田君が訊いてきた。「昨夜も飲んだの?」
「もちろん!」さわやかに応えるボクに、奥田君、ちょっと嫌な顔を向ける。
どうやら皆のテンションが低いのが、深酒のせいじゃないかと心配しているらしい。
が、言わせてくれ。血圧が普通の人間なら朝は大体テンション低いって。それともう一つ。
軟禁状態のボクらにとって、酒は「ベホイミ」なんだっつーの。
それに、ホントのとこ、みんなそんなに飲んでないよ? 久保田さんを除いて・・・

プラグを購入後、国道沿いに移動して、
ぽくぽくと歩く<佑樹>と<宏也>を、引き・寄り交えて何本か撮る。シーン、もひとつあがり。
ついでに実景もいくつかカメラに収める。
この後、近くのマクドナルドでひと休み。しばらく今後の予定の見直しに時間を費やす。
昨日随分と撮影がはかどったので、上方修正だ。
「・・・このぶんで行くと、日曜(7日)は撮休かな?」奥田君のつぶやきを、
「ふーん。順調だねぇ」と軽く受け流すボク。
だが、心の中では歓喜の喧嘩太鼓を叩きまくっていた・・・。

昼メシをコンビニで買い込み、今日もまた香貫山へ。
今日はここからが大変だ。
山で撮るのは、<佑樹>と<宏也>が絡む3シーンだけだが、うち2シーンがかなり長い。
だけでなく、2人の微妙な距離感をしっかり描き切らないといけない。
特に、阿部さん演じる<佑樹>の演出が難しい。監督の粘りドコロだ。 
長い2シーンを先に撮る事に。で、ひとシーン目。
頭のカットで蒲生さんの車が劇中に登場するため、蒲生さんは車に乗って待機。
ちなみに蒲生さん、埼玉編で<宏也の義兄>役で出演する予定。
なので、「カメラに写ってもバレないように」という奥田君のリクエストに応じて、
サングラスと麦藁帽子で変装してもらっている。・・・・・が、普通いるか?
麦藁帽子かぶったまま車運転してる奴なんて。ま、かぶせたのはボクだけど・・・
セッティングを終えて、携帯で蒲生さんにキューを出し、本番。
だが、この日も自動車とハイキングの人達の往来が結構あって、
演技うんぬん以前の問題でNGが続く。
何が大変と言って、この道、車を切り返せる広さのある場所が、
@山の麓 A中腹の車止め前、この2箇所しかない。よって、
テイクの度に蒲生さんは上の車止めまで行って、そこで折り返して麓まで降り、
また戻って来てスタンバイ、という手順を踏まなければならなかった。
結局蒲生さん、4往復はしたんじゃないか? お疲れ様です。
OKカット後、蒲生さんには車でお休みしててもらう。なにせ連日、誰よりも働いてるんだから・・・
ここでちょっと、総助監督:蒲生さんと、演出補助:ボク(北原)の役割の違いについて少しだけ。
今回の作品で最初から最後まで監督に付いて、
その手足となり現場を仕切っているのが総助監督の蒲生さんである。
衣装のチェックから、小道具の仕込み、スケジュール管理に到るまで、
奥田君の手の届かない範囲を蒲生さんがフォローしている。
で、ボクはといえば正確なトコロ、<助・総助監督>といった役回り。
蒲生さんがフォローし切れないところを更にボクが、という具合。
ただ、撮影助手的な仕事に関しては、どちらがどっち、という事も無く、
お互いその時出来る事をやる、という感じ。
まぁ、『水戸黄門』に例えるなら、「御隠居」の奥田君に対して、
蒲生さんは「助さん」と「格さん」を足したような存在。
ボクは「お銀」と「八兵衛」を足して入浴シーンを引いた様な存在か。
ちなみに、後日登場する松谷君はズバリ・・・「飛猿」?

話しを戻そう。
さあ、ここから本格的な<佑樹>と<宏也>の絡み。まずは2人がほとんど言葉を交わさない、
雰囲気で見せるパート。2人の距離感が大切だ。真剣な面持ちで演技をつける奥田君。
昨日、海に向かって吼えていたバティストゥータと同じ男とはとても思えない・・・
そして、本番。・・・NG。まだ阿部さんが<佑樹>を掴み切れていない様子。
ものすごく真摯に役作りに取り組む阿部さん。考え過ぎてしまってる部分あるかも。
<佑樹>の内面を「見せよう」と意識してしまうトコロもあって、
奥田君、そんな意識を一生懸命削り落とそうとしている。
一方の久保田さんはと言えば、そこはやはり演技経験のない彼のこと、
多少のぎこちなさはあるが、<宏也>というキャラ自体が生き方も含めて「ぎこちない」男なので、
逆に味になっている。が、微妙に「頭の不自由な人」に見えない事もなくて、ちょっと恐い・・・。
さて、リテイク。これもNG。けれど、確実に近付いているぞ。この後、テイクを重ねる毎に、
少しずつ<佑樹>に命が宿っていき、やがて、監督の声が弾む様に香貫山にコダマした。
「はい。OK!」奥田君と阿部さんが<佑樹>を目の前の空間に「削り出す」さまは、
傍で見ていても実にエキサイティングだった。
粘った甲斐のある出来になったことは、テープを巻き戻してモニターでチェックしている
奥田君の表情に、はっきりと表れている。
まあ、知らん人が見たら、ファインダーに眼を当ててニヤニヤしている奥田君は
「新手の変態」にしか見えないだろうけど・・・

一休みして、2シーン目。これまた難しいシーン。 
「奥田君、カメラは?」
「正面から2ショット。フルね。長回しでいっちゃうよ〜」
うわ〜、大変そう。でも確かにここのやり取り、ワンカットで行っちゃうぐらいがステキだ。
「いや、多少は割るけどね。でも多分、(長まわしでも間《ま》が)持つと思うんだよね〜」
監督の思った通りにするのが一番さ。ただ、役者さんはシンドイぞ・・・
途中でNGが出れば頭からやり直さなければならないので、テストは入念に繰り返された。
で、いよいよ本番。・・・NG。また少し<佑樹>が離れた。リテイク。これもNG。
今度こそ、と思ったらカメラと役者の間を車が通ってまたNG。
ハイキングの人の通りも増してきて、ちょっと休憩。う〜ん、大変だわ、ココ。
テイクの間、そしてこの休憩でも、奥田君は阿部さんに対して、
時に自分で実際に演じて見せながら、<佑樹>の気持ちの流れを丁寧に説いている。
そんな中で奥田君の口からこぼれ出た言葉が印象的だった。
「紡ぎたいのは『物語』じゃないんですよね。『人』を紡ぎたいんです」

さて、気を取り直して再トライ。お? <佑樹>が随分良くなってきたぞ。
が、あと一歩な感じでNG。その後もしばしば通行人や車に邪魔されながら
(いや、邪魔なのは明らかにコッチなんだけど)、何度テイクを重ねただろう、
マイクを持ちながら思わず「来た!」と声を上げそうになった程、
傍目にも阿部さんが<佑樹>を「掴んだ」瞬間が訪れ、ついに奥田君のOKが出た。
・・・・・いや〜、<佑樹>は難しいよ。その<佑樹>に血肉を持たせるため、
奥田君の要求に根気強く応え、且つ、自身の個性をその上に乗せた阿部さん。
そんな阿部さんが、見事、阿部さんの<佑樹>を創り上げてくれた事に、乾杯!
この後、寄り・その他のカットを何本か撮って、このシーン終了。
・・・あれ? 蒲生さんは? いけね! 呼び戻すの忘れてた・・・・・
さて、待ちくたびれて少しやつれた蒲生さんも合流し(スミマセン・・)、残すは1シーンだけだ。
と、思ったら奥田君、せっかく今日誕生した阿部<佑樹>を活かして、
昨日のシーンを1つ撮り直したいと言い出した。昨日のシーンって、あの、阿部さんが走るやつ!?
「いいっスよ! やりましょう!」春風のように気持ち良い返事を返す阿部さん。
だが一瞬、「決めのセリフを口にする直前の舘ひろし」の様な表情を見せたのを、ボクは見逃さなかった・・・
でも結果、撮り直したのは正解。阿部さんの表情が昨日より全然良かった。顔色も含めて。

この後、予定の3つ目のシーンもすんなり撮り終える。
役者さんが役を掴むと、あがるのも早い! で、山での撮影終了。お疲れ様でした〜。
後は、今朝撮れなかったサッカーのシーン(学校の校庭で撮る予定だったやつ)と、
コンビニ前の、2シーンを残すのみ。取り敢えず山を降り、学校へと向かう。
子供がいなければいいんだけど・・・。
6時近く。奥田君の実家のすぐそばにある学校に到着。校庭を見れば、黄昏時ということもあって、
親に付き添われている幼児を除いて子供の姿は見えない。
「これならイケんじゃん!」早速カメラを取り出し、簡単な段取り後、撮影開始。
一つのサッカーボールをめぐってもつれ合う<佑樹>と<宏也>。実に楽しそうだ。
が、一つ気になる事が。さっきから、少し離れた所で1人のオッサンが
防護ネットに向かって黙々と「1人ピッチング」を繰り返しているのだが、
どうしてもそのオッサンがカメラに入ってしまう。
・・・オッサン、甲子園でも目指してんのか? もしそうなら、早くどいてくれ! 
お前の夏はもう終ってるんだから・・・・・
ようやくオッサンが心のマウンドを降り、人の全くいなくなった校庭で、
日暮れと同時に気持ち良くこのシーン終了! 
ここで奥田君が聞いてきた。「北原さん。時間、大丈夫?」
「うん、大丈夫。コンビニまで付き合うよ」
実は今日、ボクは仕事の都合で一旦埼玉の自宅に帰る事になっている。
ここでばっくれるのはみんなに申し訳ない気もするが、明日は小原さんがお手伝いに来てくれる予定。
おかげで蒲生さん1人に負担をかける心配は無い。
その点に関しては、心置きなく沼津をあとにする事が出来る。有り難い限りだ。
・・・・・って、えッ!? 小原さん、来れなくなったの!? あ、そう・・・でもオレ、帰るよ? 
蒲生さん、頑張ってください・・・

すぐさま近くのコンビニまで移動。
ココはさくっと撮り終る。後日、このシーンは監督の喉に刺さった魚の小骨のような存在となるのだが、
それはまた、のちの話。とにかく、これで今日の撮影が全て終了した。
・・・・・・・・じゃ、みんな! また5日に会おう! 


(奥田コメント)
なんかおいらが言ってる言葉らしいが「紡ぎたい」という字が読めなかったので
北原さんに電話で聞いてみた。「何て読むの?」「つむぐって読む」「俺んな事言った?」
「確かに言ってたよ、覚えてる。」「物語を追うより・・とかそんなんじゃなかった?」
「いや、言ってたよ!」「うーん、ま、カッコイイからいいか。」「うん、いい(笑)」
すんません・・・。

  
7/3(水)大活躍中の北原さん(帽子)  もはや「腰を据える」は「座って演出」とはき違えてる・・?

  
と言う事でたまに立ってる。  蒲生さんカメラ前だよー。(写真撮影・蒲生さん)  校庭ではてんぱってました・・。




「撮影日記 三」

2002年七月四日(木)
昨日、北原さんが仕事のために家へ帰り、今日と明日は再びスタッフ二人、
キャスト二人体制。実のところを言うと、昨日までは北原さんがいたため、
私は映画の撮影よりもっぱらその様子をデジタルカメラで記録していたのだが、
今日と明日はそうはいかない。しっかりと自分が助手を勤めねばならない。
ところで、一日のクランクイン当日を省けば、
天候は心配されたほど悪くはなく、曇ってはいるものの雨は降っていない。
これは梅雨の時期ということを考えれば上々と言える。
本日の撮影場所は茶畑前の道。
阿部英貴さん、久保田悟さんの二人がヒッチハイクしているシーンである。
ここでは主に二人の会話で話が進んでいくわけだが、例のごとく、奥田監督は粘りまくる。
納得のいくまで何回でもテイクを重ねる。しかも長回しでカットを割らないから、時間はかかる。
ここでちょっと説明をしておくが、映画を作るときもし効率的に撮影を進めたければ、ショートカットに限る。
例えば台詞ごとに小さく区切って、ワンカットづつ撮影していく。
カットが短ければNGを出したときにもやり直す量は少ないし、
そちらの方が俳優に細かい部分の指示も与えやすい。
さらにカットが頻繁に変わった方が観客は見ていて飽きないのだ。
それに対し、長回しは時間はかかるし俳優もスタッフも長いこと緊張を
持続しなくてはならなくて大変なのだが、ショートカットよりもその場の空気はよく伝えてくれる。
ひとつの芝居の流れを一度で通してやった方が、
俳優同士の微妙な間合いの取り方、細かい掛け合いを記録できるのだ。
私自身のことを言ってしまえば、ショートカット派である。
映画というのは結局は作り物なわけだし、俳優の芝居が映画のすべての要素ではない。
限られた時間、限られた費用の中でいかにいいものを作ろうかと考えたならば、
効率性は無視するわけに行かないのだ。
しかしそれでも、長回しに強い魅力を感じるのも事実である。
さて話を戻す。奥田監督の今回のやり方は、ワンシーンの芝居のほとんど、
というか最も重要な台詞の掛け合いの部分をワンカットで通して演技させて、
よくなかったところをアドバイスし、その繰り返しで作っていく。
リハーサルを何度も重ねたりせず、すぐにカメラを回し少しでも気に入らないとテイクを重ねる。
こちらもテイク数を一々数えてはいないが、普通に一〇テイクぐらいはOKを出していなかったように思う。
これだからビデオテープの消費量も相当なものだ。これもフィルムではなく
安価なビデオでやっているからできるようなもの、
さらにバッテリー消費量の少ない、いわゆるスタミナハンディーカムだから可能なわけで、
やはり技術の進歩は我々自主製作の人間にも、恩恵を与えるのである。
撮影をしていたら回りの茶畑の持ち主が作業を始めて、農薬の噴霧器かなにかの
音がうるさくて中断を余儀なくさせられたり、中でも一番まいったのは、
すぐ横の畑のおじさんが撮影を気にも止めずカメラの前を横切ってしまったことだ。
確かに自分達も勝手にやっているわけだし、文句を言える立場ではないのだが。
その日は撮影を終えると、珍しくグルメ街道というところに行った。奥田監督が
しゃぶしゃぶの食べ放題の店があるからと出かけ、さんざん迷ったあげく、そこまで辿り着いた。
確かに食べ放題にしては高くない店で、肉を思いきり腹に流し込んでいたら、疲れがどっと出た。
奥田監督は食べ放題のわりにあまり食べず、それに対し久保田君はものすごい量を食べていた。
そう言えば、北原さんがいないときばかりいいものを食べているな、
沼津港に行ったときにも彼はいなかったなと、そんなことを話していた。
会計は監督が払ってくれたわけだが、彼のことを横目で見ながら、有り難いと思う反面、
まだ撮影は序盤、これからの撮影費用は大丈夫なのかと、
またいつものように少々不安になるのであった。


(奥田コメント)
おー、いきなし四日に飛んだねー。二日、三日は山でのシーン。北原さん大活躍!
蒲生さんは劇用車とかした車でずっと山を上り下りしたりタイヤがパンクしたり大変でしたよねー。
ほとんど現場にいれなかったものねー。んで、日記の四日の事ですかい。
つーか、今回の撮影、別に長まわしにこだわってた訳ではないんですー。
それが一番良いと思ったからそうしただけで、違う所は割ってます。覗きながら考えてたけど・・・。
カット割ってたらもっと時間かかってたなー、ワンカットずつ立ち止まる感じだったからね。細かいし・・。
時間うんぬんはやっぱ演出にもよると思う。今回は空気感、距離感が出ないと失敗すると思ったので
解りすぎる段取りや、行き過ぎた自意識が演技に見えたら出来るだけ修正しようと試みました。この後出てくる
ペコという女の子の役は自意識過剰ぐらいが調度良いと思ってたので結構好きにやってもらったけど、
やはり人間、カメラの前で演技すると自意識出ないはずがありません。細かい中に構えた感じと言いますか
理解した感情を動きで説明したがったりします。難しいねー。そこで起きた時間を切り取る感じが
うまく出てると良いんだけどなー。まぁ、一番、面倒な形の演出をしてた訳です。
早めにビデオをまわしてたのは自分が何を言われているのかを自分達の目で確かめてもらう為。
ま、撮ってたおいらが出来に喜んで「見る?」何て言って始まったんだけど・・・。
フィルムだとずっとテストだったかもねー。
見せる利点はそれなんだけど、見せた事によってこっちの手の内も見せる訳だから多少怖いです。
ワンキャメだから出来る事かもねー。あー、人の金でフィルムで撮りたい・・・。がんばろ。
二人とも「監督」じゃなくて「奥田君」でいいよー。コントみたいだから。



7/4(木)大丈夫!いくらでも待ちます!しかしこの日は暑かった・・。

モザイク日記・その3」
〜無念! 撮影には間に合わず〜

7月5日。(金)
15時50分。特急あさぎりで沼津に到着。
早速、蒲生さんに電話で帰還を伝える。
今回も撮影中だったため「迎えに行くまで少し時間がかかる」との事。
せっかくだから駅周辺をしばらくぶらつくことにした。
心地良い夕方の風が吹く中、商店街を冷やかしてまわる。
なんかこの前よりも街がざわついてる感じだ。・・・あぁ、七夕祭りが近いのか。
仲見世通りでは飾り付けが始まっていた。いいなぁ。
そう言やこれまで、沼津まで来てるっていうのに、旅情なんて全然感じてなかった。
明後日のOFFに少し歩き周ってみるか。

40分後、蒲生さんが車で迎えに来てくれた。助手席には奥田君も乗っている。
が、余りにも色が黒いので、一瞬、誰が乗っているのか判らなかった。
・・・奥田君。一昨日にも思ってたんだけど、アンタ、日に焼けるスピードがちょっと異常だって!
いくら日焼け止めクリーム塗ってないからって、
もう「小麦色」通り越して「イナゴの佃煮」みたいな色になってんじゃん!
ダメだよ、もうちょっと考えて黒くならなきゃ・・・

車に乗り込み、早速、奥田君に質問。
「今日はまだ撮るの?」「いや。今日はもう終りだよ」残念。
今日の撮影には間に合わなかったか・・・。
気を取り直して、この後の予定を聞くと、「晩飯、何食べようか〜」の応え。待ってました!
実は昨日、沼津のグルメスポットについてネットで知識を仕込んで来たのだ。
「ねぇ、なんかグルメロードってトコがあるらしいじゃん!
美味い食い物屋が集まってるっていう。行ってみない?」
すると蒲生さん、穏やかな口調で一言。
「そこ、昨日みんなで行っちゃいました」
・・・・・はい。もういいです。

 この後、大型スーパーに行って、晩の食材(結局、今日も自炊)を買い込む。
せっかく港町・沼津にいるんだからと、魚介類を中心にセレクト。
ついでに蒲生さんはバーボン1本、ボクは日本酒を一升瓶で1本+ビールを1パック、それぞれ購入。
そんなボクらを、道端に落ちてる鳩の死骸でも見る様な眼で、奥田君が眺めていた。
大丈夫だよ、奥田君。撮影に影響が出るほどは飲まないから。

アパートに行って、阿部さん、久保田さんと再会の挨拶を交わす。
たった1日会わなかっただけなのに、妙に懐かしい。
早速、奥田君に今日撮ったシーンのテープを見せてもらう。・・・うん。良い感じだね!
気がつけば阿部さんも久保田さんもやって来て、真剣に画面を見つめている。
その顔が、なんというか、実にイイ。
(・・・当たり前だけど、みんなこの映画にドップリのめり込んでるんだなぁ。ま、他に逃げ場がないとも言えるが)
さて、晩飯にしようか。奥田家から持ち出したホットプレートで、イカのスタミナ焼きを作る。
これにマグロの刺身も付く今日の晩飯は、ちょっと豪華だぞ。
よし、出来あがり!さぁ、みんな、食べ
・・・・・奥田君、キミはなんで1人で「金ちゃんヌードル」食べてんの? しかもそんな隅っこで・・・
食後は各自、『ハズしちまった日。』のビデオを見たり、『松田優作物語』を読んだり、
魚の目をほじくったりして、明日への鋭気を養ったのでした。
・・・・・はぁ。撮影の事、何にも書かない撮影日記になっちゃったな。

※ 金ちゃんラーメン:カップらーめん。西ではかなりの実力派として認知度高し。美味い。

(奥田コメント)
一週目の最後の方で、余裕があったね。
でも、気持ちは先の段取りでいっぱいいっぱいでしたねー。
金ちゃんヌードルを知らないなんて辛い人生ですぞ!

 
7/5この日の撮影風景。        部屋もすでに生活臭いね。


「モザイク日記・その4」
〜紀代さん、出番です!〜

 7月6日。(土)
今日も朝から、犯罪を犯す理由になりそうなくらい暑い。
さて、本日はこの沼津ロケ最初で最後の、屋内撮影の日。
<佑樹の実家>のシーンをまとめて撮る。場所は、奥田君の実家。
8時、奥田君の実家に「おじゃましまっす!」。奥田君の御母堂が出迎えて下さった。
座敷犬のラヴも一緒だ。「ホンっトにもう、ウチの徹(とおる)が御迷惑おかけして・・・」
恐縮する御母堂のお言葉に、一言、「はい」とお答えする、正直なボク。
早速2階へと上がらせて頂く。今日は照明をタクので、荷物はちょっと多め。
奥田君の部屋の隣、8畳程の部屋が<佑樹の部屋>。そこに荷物を運んで、ひとまず待機。
奥田君と蒲生さんの2人で、本日のゲスト、<佑樹の母>役の西島紀代さんを最寄の駅まで迎えに行く。
ラヴをさんざんいじくって、この犬が見た目のわりに身体の硬い事を発見した頃、西島さんが到着した。
早速、御挨拶する。西島さんは演技経験0の主婦。
だが、実際に<佑樹>と同じ年頃の娘さんがいらっしゃるという。なら、大丈夫! 

先にも言ったが、今日は照明をタクので、セッティングには時間がかかる。
西島さんに準備して貰っている間、照明の位置・数など色々試してみる。・・・結果、奥田君、一言。
「やっぱ照明、いらな〜い」うん。ボクもそう思う。第一暑っ苦しい! ・・・さて、撮影開始だ。
まず、洗面所のシーン。テスト。
西嶋さんのセリフはそんなに長くないが、緊張のため、日本語のイントネーションが微妙に狂う。
西島さん。リラ〜ックス! そんな西島さんに、奥田君、
「じゃ、今のセリフ、連続で5回言ってみて下さい。カメラまわしてますから」
と、なし崩し的に本番をしかける。で、結果は、OK! 次ぎのシーンの衣装に着替えて貰っている間に、
阿部さんの抜きを撮って、このシーンあがり。
次ぎは、<佑樹の母>、劇中初登場のシーン。が、ここで奥田君、いきなり西島さんに、
「<佑樹>に対してはめちゃめちゃ乱暴な、<宏也>に対しては異常に丁寧で素敵なお母さん。
そんな感じでお願いします」と、無茶な注文を出す。
つまり、ジャイアンの母ぁちゃんのように登場して、<宏也>を眼にするや、いきなり八千草薫に豹変してくれ、
と言っているのだ。・・・・・ビリー・ミリガンじゃないんだから・・・
更にここでミニ・ハプニング発生。奥田君のお父上が、「せっかくだから、ちょっと見学させて」
と、いやがる奥田君を全く気にせず、カメラの隣にどっかりと腰を据えてしまったのだ。
うわぁ〜、奥田君、やりにくそぉ〜。傍で見てるぶんにはめちゃ面白いけど・・・
奥田君のエグい要求、さらにギャラリーが増えた事もあって、案の定てこずるこのシーン。
テイクは悠に2桁に達した。が、皆の腹が鳴り出した頃、ようやく奥田君、ひとつうなずき、
「はい、OKです!」ふ〜、やれやれ。西島さん、お疲れ様でした〜!

西嶋さんが帰られたあと、奥田君の御母堂が揚げて下さったトンカツを皆でパクつき、
さて、ここからはいつものメンバーでの撮影だ。
布団を敷き、早朝のシーン。更に、雨戸を閉めて、夜のシーン。なんというか、互いの
間合いを掴んだこのメンバーでの撮影は、サクサク進む。もちろん、細かい部分にまで気
を使って徹底的に粘る、という奥田君の姿勢はそのままなので、実際には1つのシーンを
あげるのに相変わらず時間がかかるのだが、監督の要求に対する役者さんのレスポンスが
格段に良くなっているので、感覚的に「早い」のだ。ストレス。うん、ストレスが無い。
室内パートを撮り上げ、家の表へ。家へ入っていく2人、及び実景をカメラにちょろっと収める。
よっしゃ、<佑樹の実家>、全部アガリ! これで、天城さん抜きで撮影でき
る沼津のシーンは全て終了したことになる。はいっ、お疲れ様でした〜!
この後は奥田君の部屋に戻って一休みする。お気に入りのハイライト・マイルドを一つ
大きく吸って、奥田君、しみじみと一言。「実家で撮影なんて、やだねぇ〜」

 さて、メシでも食いに行こうか。っと、その前に。ボクらのアパートには娯楽が足りな
いので、取り敢えず奥田君の本棚から『ブラックジャック』と『まんが道』を全巻借りて
行くことに。・・・う、重い。袋に詰めてもらってからこんな事言うのもなんだけど、コレ、
絶対に読み切れないと思う・・・。いや、だから久保田さん。『速読術入門』借りて行って
も無理だって・・・

 昼食(と言っても既に3時をまわっていたが)は、ボクの希望が通り、昨日行けなかっ
たグルメ街道で食べる事にした。
・・・むむむ。この一帯、観光客をターゲットにしているのか、どこも結構イイ値段だ。
「でしょ?」うん。ごめん奥田君。無理言って連れて来てもらっちゃって。
でもだからって、『餃子の王将』はやめようよ。せっかく沼津にいるんだから。
 
 結局、やや値のはる和食屋で昼飯を済ませ、みんなでIPへ。「IP」というのは「いし
ばしプラザ」の略(多分)で、この近辺ではおそらく1番デカいスーパーだ。
待ち合わせ場所だけ決めて一時解散。各自勝手に買い物することに。
と言っても、「バッテリーライトの代りになる物を探しに」行った奥田君を除いて、みんなの欲しいものは一緒。
酒売場で自然に再集結した。「あぁ、ついに安酒に手を出してしまう・・・」
そう言って、なんたらいうジンとサントリー・レッドを手に悩む久保田さんが面白い。
阿部さんはビール党。早速缶ビール1パックと乾き物を籠に入れている。ボクは焼酎を1本買う。
あれ? 蒲生さんは? あ、そうか! 今日、一旦実家に帰るんでしたね。
車だから、飲んじゃヤバいっすよね。
阿部さんの「今夜、海辺で花火やりませんか?」という提案で、花火も購入し、アパートへ帰る。
ボクらを送り届けてすぐに、蒲生さん、埼玉の実家へ向けて出立。お疲れ様でした〜!
台風が近付いてるって言うし、運転、気をつけて下さいね。

この後飲みながらだらだらと過ごし、8時ごろ、海へ。既にみんな結構へべれけ。
下戸の奥田君までちょっと飲んじゃってるし。
ちなみにこのアパートからは歩いて10分とかからず海へ出られる。
真っ暗な海辺に着いて、そこら辺に落ちている木切れや紙を拾い集め、焚き火をおこす。
おお、ずいぶん火が大きくなったじゃないか。面白くなってきた。何か他に燃やすものは・・・
「これ、どうです?」阿部さんが陸揚げされた漁船を指差して言う。・・・阿部さん。それ、犯罪。
「やっちゃいますか!」久保田さん。この合宿のタイトルを『取り返しのつかない夏』にしたいの?
よし、火ももう充分だし、花火やろうぜ。でも、アルコールのせいで、うまく頭がまわらない。
これってどうやって楽しむモンだったっけ?
・・・5分後、花火の遊び方も知らないバカがこの場に集結してしまった事が判明。
「取り敢えず焚き火に投入すれば?」なるほど、奥田君。グッドアイデアだ。
躊躇なくドラゴンを焚き火に投入。・・・ん? なんにもおきないぞ?
と、いきなり予想外の方向に吹き出る火花。「うおっ!?」「あはははは、おもしれぇ! 花火って!」
この後、調子付いてバンバン花火を焚き火に投入するボクら。その焚き火を囲んで、時折
飛んでくる火花や火の玉を避けながらビールをあおる。
どうみてもカワイソウな人達の集会になってしまった・・・。
ひとしきり花火も終り、ボクと久保田さん、酔った勢いで波打ち際まで行ってみる。
真っ暗な波打ち際では、打ち寄せる波との距離感がまったく掴めない。なんとなくもう少し、
もう少し、と前進していって、気が付いたら波が膝まで来るぐらいの所に立っていた。
ふ〜、冷たくて気持ちイイ。・・・が、ここでふと、我に返る。これって大きな波が来たら
オレら呑まれるんじゃ・・って、もう来てるよ! 目の前にデカイのがっ!!
「久保田君、アレ見てっ! 逃げろっ!」「うおぁっ! やべぇ!」
・・・・・マジで危なかった。間一髪。・・・海での事故の何パーセントかはこうして起きるんだろうな。
尻までびしょびしょになりながら安全圏まで逃れ、ふと見れば、右足のビーチサンダル
が消えていた。「・・・あ〜あ、ビーサン、片一方、流されちゃったよ」「自分もッス!」
「え、久保田君も? オレ、右だけど、久保田君は?」「左っス!」
じゃあ自分のを使ってくれ、とはどちらも言わなかった・・・。

仲良く片足を引きずりながら戻ってきたボクらを見て、大笑いする奥田君。
と、ちょっと離れた所から阿部さんが駆けて来て、
「向うの防波堤のそば、デカイ波がぶち当たってますよ! 近くまで行ってみません?」
・・・・・阿部さん、もう波打ち際はイイっす。死ぬから。
 
この後、台風の影響なのか、いきなり土砂降りの雨に見舞われ、近くの漁師の番小屋に
一時非難。久保田さんのジンを回し飲みしながら雨脚が弱まるのを待って、
アパートに帰ったのでした。 ・・・・・さて、明日は丸1日OFFだ。何しよっかなぁ。 


(奥田コメント)
ビリー・ミリガンって何?
あと<「やっぱ照明、いらな〜い」
こんなしゃべり方などしないのじゃ。もう少しカッコイイ!


いやいや、お疲れさまでした。

2002/7/7(日)から7/13(土)までの日記へ